事件の日~ミッキーとの最後の時間~

命を奪われた、2015年3月23日。

志望校合格を決め入学準備の為教科書等の買い物を済ませ、合格掲示板を見に高校へ寄った後、
合同庁舎内の売店で収入証紙を購入しました。
これで一通り、高校入学に必要な買い物が終わりました。
売店では、ミッキーが、お腹が空いているかもと思い、菓子パンも一緒に購入しました。

移動の車中で菓子パンを手渡すと
「甘くて無理!全部食べられないから、食べて~」
と、妹に半分あげていました。

それから高校には
「自転車で通うか、電車にしようか?」
「自転車で通うならこのルートが近いね」
など話しをしました。ミッキーは電車で通いたいようでした。

今思い出しても、幸せな時間・・・

それから、公文で勉強を終えた長女の迎えに向かいました。
途中、少し年配の男性がスクーターで走る姿を見かけ「バイクいーなー」とミッキーが言いました。

若者がカッコよく乗っていたのではなかった為、少し笑ってしまいましたが
「16歳から免許は取れるけど、ここは冬が長くて乗れる時期は短いし、路面が凍結して危ないよ。
18歳になれば車の免許取れるから必要ないよ」
と言いました。年齢的にバイクに憧れる時期なのかな?

公文で長女を車に乗せた後、私は三人の子供たちを連れて出掛けたことが久しぶりだったため、
もう少し帰りたくない気分でした。

「ソフトバンクで携帯見ようか?」と言いました。


ミッキーは沢山用事を済ませたため、帰りたい様子。
でも、携帯電話を持っていなかったため、高校生になったら欲しいという気持ちもあったようです。


車を降りる時
「なんかこのパーカー小さくなったみたい!キツイから脱いでいい?」
とワインレッドの半袖Tシャツ一枚になりました。
その日は少し肌寒い日でしたが、ミッキーは割と暑がりで、普段から薄着の子でした。

入店すると、カウンターは先客で埋まっていました。

私が「どれが欲しい?」と聞くと店内の商品をさっと見回し
「これ~」  と、即決‼︎

機種を決めたら、ミッキーは
「今日は7時からゼミだから、先に帰るよ」
と歩いて帰ってしまいました。

順番がきて、プランの説明や、光回線の切り替え方法などを聞きました。
携帯を購入したい気持ちもありましたが、ミッキーは色を決めていなかったことと、
早く帰ってミッキーに食事を用意したかったこともあり、後日購入することにしました。


帰宅すると、ミッキーは自室でくつろいでいました。
「お腹空いたよね?すぐに作るね」と声をかけ、青椒肉絲を作りました。
「できたよー」と呼ぶと、ダイニングにやってきて、携帯電話を「買ったの?」と聞いてきました。
「買ってないよ。色決めてくれなかったし、時間もなかったし」
「色なんてなんでもいいよ~。俺がそんなこと気にすると思う?」
「でもさ、ピンクじゃイヤでしょ~?緑もイヤだよね?じゃあ、白か黒かな?」
と、少しふざけて聞きました。
ミッキーは笑いながら「黒」を指しました。
「三月中に購入しよう」と約束しました。


とても楽しい時間でした。
今、思えば、あの日にもし携帯電話を購入していたら、未来が変わっでいたかもしれない…
そんな事も考えてしまいます。
ミッキーの喜ぶ顔が見たかった…。

ミッキーは青椒肉絲を完食し、ゼミに行くまで少し時間があったため
「髪を切ろうか?」と聞きましたが、「明日~」と断わられてしまいました。
生まれてから、ずっと私が散髪していました。

「じゃあ、部屋を片付けようか?」と言うと
「帰ってきたらね~」と、こちらも断わられてしまいました。
「今日買った教科書を置くスペースを作りたいから、帰ってきたら片付けようね」と約束しました。

ミッキーにフラれてしまい、仕方なく、家族の夕食の支度に取り掛かりました。
しばらくすると、玄関が閉まる音がしました。

6時45分。「ミッキーったら、いってきますを言わずに出ていったな…」と思いました。


それがミッキーとの最期になるなんて


「ただいま」の声を聞くことは、できませんでした。
ミッキーのために用意していた、ハンバーグもそのままになりました。
帰宅したら、食事をさせ、足りなければミッキーの好物の「茄子の薄焼き」を作ろうと思っていました。

それから部屋を片付けて、新しい教科書を並べるはずだったのに…

やっと、少し難しいと言われる思春期を乗り越え、高校もきまり、これからという時でした。


ミッキーは横断歩道の真ん中、道路のセンターラインで衝突され、
たった15年の人生しか歩めませんでした。
ルールを守っていた分、殺された感が強く残ります。
事故であれ、殺人であれ、大切な我が子を突然奪われたのです。