公判前整理手続


制度の内容、被害者立場からできる事・・・・
わかりやすくまとめてみました。


公判前整理手続(刑事訴訟法316条の2)とは

平成17年11月の改正刑事訴訟法施行で導入された制度。
裁判官、検察官、弁護人が初公判前に非公開で協議し、証拠や争点を絞り込んで審理計画を立てます。
2009年5月までに始まる国民が参加する「裁判員制度」を見据えて作られた制度です。
裁判員に選ばれた方の時間的拘束などを短くし、計画的で迅速な審議を行うための、
あらかじめ被告の否認事項をまとめようというものです

裁判所は、検察官及び被告人または弁護人の意見を聴いて、公判前整理手続に付する決定。手続を主宰
(
316条の2、規則217条の2Ⅰ)
 公判前整理手続は、被告人に弁護人がなければ手続を行えません(316条の4)
検察官または弁護士の期日への出席が必要となります(316条の7)



制度の内容

原則的に、この制度が適用されるのは殺人、殺人未遂強盗殺人、危険運転致死傷罪など
悪質な「故意」犯罪に用いられます。
裁判長権限で「過失事件」での適用も可能とされています

参加できるのは「裁判官」「検事」「被告側弁護人」
被告人も、公判前整理手続期日に出頭することができます(316条の9)
被害者の関する明記は、一切ありません。当然参加もできません。

非公開で行われます。

検察官は証明予定事実を明らかにし、証拠を開示しなければいけません。
弁護人も争点を明示し、自らの証拠を示さなければなりません

「公判日時」「公判回数」「証人尋問」「意見陳述日」「判決言い渡し日」の全てが
公判前整理手続きの中で決められてしまいます



今までの裁判との違い

従来の刑事裁判では検察側と弁護側のやりとりは全て公開の法廷で行われますが。
公判前整理手続は非公開で行われる。ここで裁判の進行が決まります。

これまでの裁判においては検察官が事件の全体像を説明する「冒頭陳述」を行ってから、
それを裏付ける証拠を示したり、証人などをおこなってきました。
弁護人はそこで検察官の示した証拠や捜査の弱点を示して反論を行います。
裁判の途中で新しい証拠が提出することも出来ましたが
この手続きを経た裁判は、証拠請求が制限されます。
検察、弁護人双方が事前に決めた争点以外で争うことはできません。

公判前整理手続又は期日間整理手続に付された事件については、「やむを得ない事由によつて公判前整理手続
又は期日間整理手続において請求することができなかつたものを除き、
公判前整理手続又は期日間整理手続が終わった後には、証拠調べを請求することができない
(刑事訴訟法316条の321項)。
なお、裁判所が、必要と認めるときに、職権で証拠調べをすることができます(同条2項)。



初公判では検察、弁護側双方が冒頭陳述を行い、手続の結果を裁判所が説明しますが簡単な説明です。
公判は連日開廷が原則。(裁判員の負担を減らすため)
一日の公判が、朝から夕方までの場合もあります。(途中,休憩等は入りますが)



問題点と被害者に出来る事

今までの裁判では知ることが出来た情報が知ることが出来ません。
検察官は証明予定事実を明らかにし証拠を開示します。そこで証拠の選別をして、論点の整理をします。
出てくる書類が一般裁判に比べは少なくなることも懸念されます。
それを、どうするかは、この手続に付すと決まったらすぐに検察官に
「手続では全ての捜査記録を証明予定事実として必要と出してください」
と『お願い』するしかありません。

争点を証明するために最も適切な証拠は何か,その証拠をどのような方法で取り調べることが
最も分かりやすいかなど裁判所,検察官,弁護人が相談します。
そして証拠の「同意」「不同意」が決まります。
その元となる証拠を最初から検察が隠せば、当然ですが3者審議対象にすらなりません。
「同意」であれば表に出ます。「不同意」であれば証人尋問予定が立てられます。
つまり、被害者側の入手できる情報が増えるという事です。
あとは裁判後、「不提出記録の開示請求」を行ってみるしかありません。

しかし、これは被害者が検察の『手持ち証拠』を把握してなければ難しいでしょう。
確定記録開示請求という方法もあり、やってみましたが黒塗り書類でした・・・

連日的開廷が原則なので、第1回公判終了後すぐに書類の閲覧・謄写を申請しても
許可が下りるまで、約2週間程度かかるため
事件によっては裁判終了後に書類が手元に来る事もありえます。
唯一、被害者が法廷で認められている権利『意見陳述』も
事件内容が把握できない状況で行う懸念が大きいのです
更に、新たな証拠調べになりえる可能性のなる内容の意見は制止されます。
事前に裁判所から「意見陳述書」の提出を求められ、場合によっては削除命令がでます。

本来であれば、知りえることが出来た内容も、密室で整理されるため、事件の全体を把握できません。
そしてこの手続には被害者の参加は不可、検事からの情報の提供もないまま
「争点」つまり被告が起訴事実の内容の中で否認している箇所のみを審理するのですから
被害者は、「何をしているのか?」と首をかしげる裁判になります。

では、裁判の前に事件内容を検事が被害者に教えてくれるのか?
公判前整理手続の内容を教えてくれるのか?
といえば、刑事訴訟法47条を楯に教えてはくれません。
密室=非公開と解釈している検事が殆どですから、
手続の行われる日までを教えてくれない検事もいます。
そんな中で詳しい説明などしてくれるはずもありません・・・


そこで、被害者としてどうするべきか。
犯罪被害者保護法と犯罪被害者基本法を行使する!!
公判前整理手続は、保護法や基本法と逆行していることをまず覚えておきましょう。

連日的開廷に関して
これは、被害者にとって精神的・肉体的苦痛の何者でもありません。
犯罪被害者基本法で、
『法務省において、犯罪被害者等の意見が適切に刑事裁判に反映されるよう、また、
公判期日の設定にあたっても、犯罪被害者等の希望が裁判所に伝えられるよう、必要に応じ適切な形で
検察官が犯罪被害者とコミュニケーションを取る事を検察の現場に周知徹底を図っている』
としていますから、どんどん意見を検事に伝えていく事が重要になります。

「犯罪被害者等基本計画」で指向されている「被害者の刑事裁判に参加する権利の拡大」
という視点からは正に逆行ではないか。
「保護2法」で新設された、
公判後訴訟記録を閲覧謄写でき、事件の詳細を知ったうえで意見陳述できるという
被害者の権利も制限されることがあってはならないということです。
意見が認められるかはともかく、検事に対し自分たちの意思をしっかり伝え、
その結果・経緯を教えてもらう。そして(手続の進行上状況を知る上でも)検事と密に連絡を取る事も重要です。


捜査の内容に関して
同じく、犯罪被害者基本法で『法務省において、捜査段階から、捜査に及ぼす支障なども総合考慮しつつ
必要に応じ、適切な形で犯罪被害者等に捜査に関する情報を提供するよう、検察に周知徹底を図っている』
とされていますから、情報提供できないといわれた場合しっかり理由を聞くこと。
事件内容がわからないまま裁判で意見陳述は出来ないことも伝え、
出来る限りの情報提供を求めましょう。


「犯罪被害者等基本計画」で指向されている「被害者の刑事裁判に参加する権利の拡大」
という視点からは正に逆行ではないか。
と、犯罪被害者側も法律論で返していく事になります。
被害者の「知る権利」を行使していく事は、この制度では特に重要です。



最後に、まだ完全に確立、徹底されていない制度なので検事によって対応が異なります。
それでは、犯罪被害者は「検事の当たり外れ」で捜査機関からの二次被害を被る場合があるという事になります。
この制度による犯罪被害者等の犠牲をなくすためには、被害者の声が何より重要になります。
犯罪者が手続に参加でき発言も出来る。密室の中で被告は裁判官に対し意見を述べる事ができるのです。
逆に被害者には権利もないの現状を変えていく必要がありますし、
公平な裁判のためには、この法律の改正が必要だと私は思っています。