◆真実が知りたい 両親の戦い
2008年1月14日(水)
和久井)娘の死から5年。遺族は今も事故の真相を追い求めています。
なぜ、娘に落ち度があるというのか?
その一心で両親は戦い続けてきました。


VTR
【南幌町の景色】
2009年元日。
       
【美紗さんの仏壇の前のおじいちゃん】
「おじいちゃん、美紗ちゃんにお年玉」
「顔見えなくなっちゃうね」
「どうしても涙が出てくるな」

【美紗さん遺影】
白倉美紗さん、当時14歳。2003年9月、
美紗さんは中学校への通学途中、トラックにはねられ亡くなりました。

【仏壇に向かう両親】
1日は美紗さんの月命日。あれから5年余り。
新しい年を祝う、そんな当たり前の正月は白倉家にはありません。
しかし、今年は節目の年になると家族は考えています。

【白倉博幸さん】
「最初に、今年もよろしく。今年、今年大きく変わるから、
 頑張るから応援してね。(と伝えた)」

【資料棚を案内する両親】
本当のことが知りたい。その一心で戦い続けた5年。
両親が集めた事故に関する資料は棚一杯に並んでいました。

【白倉裕美子さん】
「何でも書類として目を通さないと・・・。増えましたね。気がつけば。」

【発生直後の事故現場】
警察は当初、事故は美紗さんが道路に飛び出したために起きたと結論付けました。

【自転車の検証】
【ルミノール調査】
しかし両親はその結論を受け入れることができませんでした。
なぜ娘は事故にあったのか、路上の血液反応を調べるなど
白倉さん夫妻の独自の調査が始まりました。

【専門家による調査】
その調査によってトラックは90キロ以上のスピードを出していたことや
美紗さんは飛び出していないという結論を導き出しました。

【事故現場の花束】
そして事故から2年後、検察はようやくトラックの運転手を起訴しました。

【二審の廷内】
高裁まで進んだ刑事裁判では、トラックは
82.7キロ以上で走行し美紗さんをはねたが、
暴走とは言えない、美紗さんは横断途中でありわずかながら落ち度があったと、
運転手に執行猶予のついた有罪判決を言い渡しました。

【控訴審判決後の会見】
【白倉裕美子さん】
「どうして、美紗が悪く言われなければいけないのか」
「納得できない」

判決に納得出来ない。白倉さんは民事裁判を起こして
事故の真相究明に乗り出します。再び戦いが始まりました。

【自動車短大 茄子川教授研究室に入る】
白倉さんは改めて事故の鑑定を専門家に頼むことにしました。

【茄子川教授とのやりとり】
どうしても理解できないことがあったからです。
美紗さんの身体に残った左頭部の傷です。

【白倉裕美子さん】
「左の足や、左の手に傷があった。左の額にも傷があったと調書に書いてある」

【白倉さんの代理人 青野弁護士】
「横断中であれば、本来ダイレクトに当たるのは
 右に当たるのでそこが矛盾するのではないかと・・・」

【シャッター開ける】
刑事裁判が終わるまで検察に保管されていたトラック。
白倉さんは貴重な証拠として買い取りました。

【白倉家の倉庫】
そのトラックは今、美紗さんが乗っていた
自転車と共に家の倉庫に保管されています。
トラックに残る衝突の跡は真実を知っているはずです。

【鑑定書】
鑑定の結果は、白倉さんが信じた通りでした。
美紗さんは交差点の横断を終えていて、落ち度はないと判断されました。

【警察が導き出した事故状況CG】
警察が導き出した事故の状況です。
美紗さんが無理に横断を始めたため、トラックは急ブレーキをかけ
右に避けたものの間に合わず、美紗さんの右側に衝突、
左頭部の傷は道路に投げ出された時にできたものとされました。

【白倉さんが導き出した事故状況CG】
しかし鑑定では、トラックのスピード、ブレーキ痕の長さ、
そして、美紗さんの損傷状況などから、横断後、向かってくる
トラックをみて、驚いて戻ろうとしたが間に合わず、
美紗さんの左側に衝突したと結論付けたのです。

【札幌地裁】
民事裁判ではこの鑑定書の内容が争われ
そこで、白倉さんは衝撃の事実を知ることになります。

【運送会社の事故報告書】
これはトラックを所有する運送会社が国土交通省に提出した事故報告書です。

【危険認知速度、距離の欄】
刑事裁判では、82.7キロ以上のスピードが出ていたと認定されましたが
国土交通省への報告では60キロと記載されていました。
また運転手の違反歴などを偽っていたのです。

【法廷】
裁判でも新たな事実が次々と明らかになりました。
証人として裁判に出席した警察官はこう証言しました。

【吹き替え・警察官】
「本当、恥ずかしい話ですけど気付かなかったと言うしか」

【現場】
事故直後の現場検証で最初にできたトラックのタイヤ痕を見逃していたのです。

そしてトラックの運転手もこう証言しました。

【吹き替え・トラックの運転手】
「衝突地点が分からない中でどうしても言えと警察官に言われ示した。
 大体この辺だったかなという感じで」

【現場】
無理やり衝突地点を言わせ警察官が調書を作成するなど
当時の捜査の問題点が法廷で次々と明らかになったのです。

【札幌地裁を出る白倉夫妻】
白倉さん夫妻が動かなければ白日の下にさらされることはなかったであろう事実。
真相を追い求めた裁判は、先週、結審し、判決を待つのみとなりました。

【白倉博幸さん】
「きちんと証拠を見てもらえれば、わかってもらえると思うので、
 いい判決 が出ることを望んでいます。」

【白倉家の家族写真】
もし、美紗さんが生きていれば、ことし成人式を迎えていたはずでした。
両親の5年間にわたる執念は実を結ぶのか、判決は、3月5日に言い渡され、
白倉さんの真実を知る戦いが節目をむかえます。

END

「北海道新聞」2008年7月24日

交通事故の調書、捜査中も開示を
  法相に要望書


 「北海道交通事故被害者の会」(札幌、前田敏章代表)など道内外四団体が二三日、法務省を訪れ、
捜査段階で事故調書などを被害者や遺族に開示するよう求める要望書を鳩山邦夫法相に手渡した。
 鳩山法相が五月の衆院法務委員会で開示に前向きな発言をしたのを受け、各団体が申し入れた。
前田代表ら道内関係者三人を含む九人が大臣室で法相と約三十分間面談。
要望書を受け取った鳩山法相は「開示に近づけるよう努力したい」と述べた。
 面談後、空知管内南幌町の農業白倉博幸さん(三七)、裕美子さん(三八)夫妻は
十四歳の長女を亡くした五年前の事故を振り返り、「最初は倒れていた場所さえ捜査上の秘密として教えてもらえなかった。
加害者の証言だけで事件が組み立てられるのはおかしい」と話した。


毎日新聞 2008年7月24日

<交通事故>
捜査書類を捜査段階で開示を 遺族らの4団体

 交通事故遺族らでつくる4団体の代表が23日、鳩山邦夫法相と面談し、実況見分調書などの捜査書類を
捜査段階で開示するよう要望した。
交通事故の捜査書類は、容疑者が起訴された場合は初公判後に、不起訴の場合は不起訴決定後に
一部が開示される。このため、不起訴後に実況見分調書の開示を受けた遺族らが「加害者の一方的な言い分だけで
不起訴にされた」と訴えるケースが多い。

この日は、「交通事故被害者遺族の声を届ける会」(川崎市)や「TAV交通死被害者の会」(大阪市)などが
「遺族が捜査を検証できるようにするため、早期に実況見分調書を開示してほしい」と訴えた。
鳩山法相は「できる限り事実関係をお知らせして、被害者遺族のご意見を少しでも反映するようにしたい。
被害者が亡くなって『死人に口なし』とされ、加害者が適当な言い逃れをするようなことがあってはならない」と述べた。



サンデー毎日   08年7月15日

3日で終わる裁判の落とし穴。
告発・娘はこの制度の犠牲にされた

http://www.ne.jp/asahi/remember/chihiro/sundaymainichi080720.pdf



週刊現代    08年7月20日
葬られた「変死体」事件簿  最終回

北海道 14歳少女「事故死」事件
交通事故でも杜撰な捜査が。遺族による執念の捜査の末・・・
「頭部骨折」「ぬけ落ちた歯」遺体が証明した『死の真相』

http://www.ne.jp/asahi/remember/chihiro/gendai080726.PDF



テレビ朝日 「スパーモーニング」 08年7月23日
『もう泣き寝入りしない』

14歳少女事故死の闇
遺族の執念で新事実が!!



テレビ朝日 スーパーJチャンネル  08年7月31日
~木曜特集~

14歳少女 交通事故死の真相
杜撰な事故捜査 現場に落ちていた娘の歯・・・
両親の執念が娘の無念を晴らす!



朝日新聞 2008/10/19

交通事故被害者が司法の課題を報告
  札幌でフォーラム


交通事故被害者や遺族らでつくる「北海道交通事故被害者の会」(前田敏章代表)が18日、
札幌市中央区で「公開フォーラム・交通事故2008」を開いた。
5月の裁判員制度実施を前に、公判前整理手続きや捜査記録開示をめぐり、
被害者から見た司法制度の課題を報告した。
 長女を交通事故で亡くした空知管内南幌町の白倉裕美子さんは、
裁判の争点や立証方法を絞り込む公判前整理手続きについて問題点を指摘。
被告が出席できる一方、被害者は出席できないため「密室の協議で不公正だ。
裁判員制度で公判が短縮されれば、その分被害者が得られる情報量が減る。出席を求めるべきだ」と訴えた。
 札幌弁護士会所属の青野渉弁護士は、交通事故の実況見分調書など
捜査記録の開示について問題点を報告。
現在は捜査段階では記録の開示が一切認められておらず、
「記録を見て捜査の疑問点が見つかっても、すでに裁判が始まり手遅れのケースが多い」と指摘。
「交通犯罪に関しては、捜査段階で開示しても捜査への支障は少ない。
むしろ警察の捜査に対するチェックという利点がある」と述べた。






2008/11/17 北海道新聞夕刊

交通事故 撲滅を願って
被害者側が報告
札幌でフォーラム


 世界各国で一斉に交通事故の撲滅を考える「世界道路交通犠牲者の日」の十六日、
「交通死ゼロへの提言」をテーマに掲げた札幌フォーラムが、札幌市中央区のかでる2・7で開かれた。(堂本晴美)

 交通事故調書の開示を求める会(事務局・横浜)の主催で、約五十人が参加。
ジャーナリストや研究者、道内の被害者らが「運輸業界の規制緩和」
「交通事故調書の早期開示」などをテーマに報告や講演を行ったほか、パネル討論で意見を交わした。
 被害者による報告では、二〇〇三年に長女がトラックにはねられ亡くなった
空知管内南幌町の白倉裕美子さんが「公判が始まるまで被害者は警察の調書を見ることができず、
警察は加害者の説明に頼った事故処理を行った」と指摘。
起訴前に被害者に調書を開示するよう制度改正の必要性を訴えた。

【写真説明】交通事故撲滅に向けた課題が報告された札幌フォーラム




2008/12/5
STVどさんこワイド特集
迅速な裁判「公判前整理手続き」とは


釣具店の店員を車で引きずり殺害したとされる男に、きょう判決が言い渡されました。
わずか3回の裁判で結論を出したスピード判決。その背景にあるのは、「裁判員制度」です。

(送検される丹羽大介被告)札幌市北区の丹羽大介被告21歳。
丹羽被告は、今年8月、札幌市北区の釣具店で釣具を盗み
追いかけてきた店員の迫田寛之さんをクルマで引きずり殺害したとして
強盗殺人の罪に問われています。

「死にいたるとは、思いませんでした」
今週1日の裁判で丹羽被告は殺意を否認しましたが、
検察は「迫田さんを68メートルも引きずっている」などと、殺意はあったと主張したのです。

殺すつもりはあったのか、それとも、なかったのか。これが唯一の争点でした。
もし、殺意が認められると、どうなるのでしょうか。
(横内記者)「『強盗が人を死亡させた場合、死刑又は無期懲役に処する』とあります」

「人生全てを費やして、罪を償うべき」。検察は、丹羽被告に無期懲役を求刑しました。
迎えた今日の判決。札幌地裁は、丹羽被告の「殺意」を認め、
求刑通り無期懲役の判決を言い渡しました。

無期懲役という判決を下した丹羽被告の裁判。判決に至る日程を確認します。
これは今回の裁判の日程です。
今週月曜日に1回目、火曜日に2回目が開かれて、検察が無期懲役を求刑しました。
そして、きょう、判決が言い渡されました。裁判が開かれたのは、5日間でわずか3回です。
しかし、2001年に札幌市で起きた強盗殺人事件は判決まで9ヶ月、
2005年に赤平市で起きた強盗殺人事件は、判決まで半年かかっています。
今回の事件はなぜこれほど早く終わったのでしょうか。
そのワケは、この「公判前整理手続き」という制度なんです。

「公判前整理手続き」とは、「公判」、つまり、裁判が始まる前に
裁判の争点を整理するという制度です。
例えば、一つの裁判では、
・事件の動機。
・殺意があるか、ないか。
・死因は何だったのか。
・精神状態は正常だったのか。
など、様々な争点があります。
裁判で全てを話し合っていては、非常に時間がかかってしまいます。
そこで、「公判前整理手続き」をして、裁判で何を争うことにするか決めるわけです。
例えば、「殺意があったかどうか」だけを裁判で争うという感じです。
こうすることで、裁判がわかりやすくなるし、
判決までの時間が短縮できるというわけです。
一見、いいことづくめの制度のようですが、課題も抱えています。

南幌町の白倉博幸さんの自宅に保管されている、壊れたトラックの残骸。

(白倉博幸さん)「美紗を引いたトラックの前部分を買い取って、 自分たちで保管しています」
白倉さんは、娘を交通事故で失いました。娘の死の真相を知りたい。
このトラックも、そのために解体業者から買い取りました。

白倉美紗さん、当時14歳―。
その事故は5年前に起きました。
自転車で中学校へ向かっていた美紗さんをトラックがはねたのです。
「一語一句聞き逃すことなく、聞いてきたいと思います」
事故から3年後、業務上過失致死の罪に問われた
トラックの運転手の裁判が始まりました。
すでに起訴から半年が経過していました。
実はこの間、事件は公判前整理手続きにかけられていたのです。

(白倉裕美子さん)「一体、誰のための制度なのか疑問なんです」
白倉さん夫婦は、公判前整理手続きに対して疑問を持っています。
「争点に関わること意外はほとんど触れないので、 (事件の全体像が)わからなかった。
 どれくらい跳ね飛ばされて、どういう状態で亡くなったか、そういうものが出てこなかった」
争点が絞られたことで、かえって事故の全体像がわからなくなったといいます。
なぜ、こんなことになるのか。

(横内記者)「札幌地方裁判所です。裁判員制度の開始を前に、
 公判前整理手続き用の部屋が新たに作られました」
これが、その部屋です。ここに裁判官と検察官、
それに、被告とその弁護人が集まって争点を絞り込みます。
ここでの内容の詳細は原則、非公開です。
非公開の中での争点の整理。
これが白倉さんが、公判前整理手続きに疑問を持つ理由です。

「きちんとした全体像が見えて、初めて人を裁けるでしょうし。
 法廷で見聞きしたことで、判断すればいい。
 膨大な書類は読まなくていいと裁判員制度をアピールしていますが、
 それで本当に裁けると思いますかって(言いたいです)」

1週間前、裁判員候補者に通知書が発送されました。

通知を受け取った候補者は、どう考えているのでしょうか。

(裁判員候補者)
「専門の裁判官も立ち会って、裁判を進めていくわけですから、
 その辺を悪い意味ではなくて、導いてくれる、うまく法のことを教えてくれればいいと思う」

裁判員の負担を減らすために、
わかりやすさと迅速さが求められる「裁判員制度」と、
その前提となる、「公判前整理手続き」。
裁判員制度の開始を前に、そのあり方が問われています。

★和久井キャスター
従来の日本の裁判は、正確さを重視するあまり、
極端に専門的過ぎたり、オウム真理教事件のように
長期化するものもありました。
わかりやすく、短期間での裁判を求めることは間違いではないと思います。
しかし、裁判員の負担を考えるあまり、
必要以上にわかりやすさや迅速さを求めるのは、いかがなものでしょうか。
STVでは、裁判員制度に関する情報やご意見を募集しています。