平成24年6月22日内閣官房副長官補付(法務担当) 御中
所属 交通事故調書の開示を求める会 (副代表)
住所 北海道---------------
氏名 白倉 裕美子
連絡先電話番号 ----------
メールアドレス --------@r-.dion.ne.jp
「再犯防止に向けた総合対策」(案)に対する意見
再犯防止の取り組みは必要だと思います。
検挙人員に占める再犯者の割合の増加、
刑務所に満期入所した受刑者の再入者率の高さに比べると
仮釈放による出所者の再入率が低い事から、
再犯防止に取り組む中で仮釈放を積極的に推進すればとの考えを理解できないわけではありません。
また、平成17年度以降の仮出所者の割合が減少を続けていることから、再犯防止の観点から
仮釈放という制度で再犯減少が期待できるとも考えられるのかもしれません。
加えて、満期懲役釈放者は仮釈放者と異なり保護観察制度がなく支援策の問題から
満期の再入所率が多いと考えられるとの前提から、
「刑務所出所者の再犯防止策」の検討自体は重要な事項であると考えます。
または禁錮刑の受刑者を刑期満了前に釈放し、仮釈放の残期間が満了するまで
「保護観察に付す」ことで様々な連携を図り、円滑な社会復帰を促進することで、
仮出所者に対する自己有用感、規範的意識の向上、社会の協力を得る事での
社会性の成長が得られるとの考え方も理解できなくはありません。
しかしながら、今回の「再犯防止に向けた総合対策(案)」が、
再犯者の減少と称した刑事施設(刑務所)の人員増加による
過剰収容の解消も目的と考えられることから、以下の意見を述べる事とします。
本件パブリックコメントに関する資料を見たところ、
平成22年の法制審議会「被収容人数適正化方策に関する部会」の発足においての
『刑の一部の執行猶予制度・社会貢献活動の導入』
(法務委員会調査室・森本正彦氏)の文書内容と多々重複した内容が多くみられます。
1、仮釈放の執行率の低下
2、施設内処遇の期間の長期化で十分な社会ない処遇の確保が困難
3、施設内処遇と社会的処遇の有機的な連携
4、刑法犯に認知件数の高い水準での推移と受刑者の平均刑期の長期傾向
5、刑事施設の人員の増加傾向での過剰収容の深刻化
6、再犯者人員の増加傾向
7、社会奉仕を義務付ける制度の検討
などが挙げられると思います。
つまり、「再犯防止」と言葉を変えてはいますが
『刑の一部執行猶予制度・社会貢献活動の導入』とは
密接なつながりがあると捉えるには十分だと思います。
出所者の住居や仕事がない場合の再犯率が高い現状を踏まえると、
定住先がない出所者を一時的に受け入れる更生保護施設の強化、
住宅や就労先の確保支援、刑務所での職業訓練の充実が再犯防止における
円滑な社会復帰に不可欠であることはある程度理解できますが、
犯罪被害者遺族である自身の想いとしては、
私どもが納めている税金でそこまで手厚い保護は承服しがたいのが心情です。
なぜなら被害者に対する援助がまだまだ足りないからです。
犯罪被害者に対する援助・支援の不足感がある以上、ただ安易に国が支援をすればいいとは思いません。
犯罪者が出所後路頭に迷うなど、将来への不安から再犯者となっての刑務所への舞い戻りを防ぐためには、
当面の生活資金と仕事が必要です。そのためには受刑中に「
社会人として自分に何が欠けていたのかをしっかり考えさせた上」で、
出所後に社会生活を送るにために備えていなければならない知識や常識を徹底教育したのちに、
受刑者が出所後の生活をイメージし具体的な計画を立てる、目標を持つことが必要ではないでしょうか。
矯正教育と共に人生設計を立てる事が社会復帰のために必須だと思います。
また、出所後の金銭不安を取り除くことに対しては、安易に支援すればいいというものではなく、
自身で資金をためることを刑務所で積極的に行うべきです。
服役中に製造業等、労働業務に従事させ報奨金を強制的に貯金させ、
出所時に本人に交付することも受刑者の将来設計を考えさせる上で重要です。
出所後の就労・住居の支援としては、刑務所での作業従事内容が生かせる職場を
国と企業で準備する事が1つの策と思います。
そこに更生保護施設の役目も果たす住居(寮)を準備し、社会復帰と更生を行ない再犯防止に努めるなど
出所後もしばらく監視下に置くことも視野に入れ、再犯防止に取り組むべきだと私は考えます。
また、薬物による再犯率の高さは刑の軽さの問題、加えて専門の治療施設が不足しています。
一度手を出したらやめられないと言われる薬物使用者に対しては、
刑期終了後に治療専門施設への強制入所を判決に含めることもあっていいのではないでしょうか。
昨今も再犯刑法犯による重大再犯事件が現実に発生しており,
私たち国民にとって大きな不安を持つ事件の多発している事を考慮すれば
今回の『再犯防止に向けた総合対策(案)』を完全否定するわけではありません。
ただし、この度の対策案は先に申しあげたように『刑の一部の執行猶予制度・社会貢献活動の導入』
と大きく重複する内容がある事から「再犯防止」を掲げている事は
あくまでも表向きの事ではないのかと思えるのです。
重複箇所が多い理由を考えますと、再犯防止対策と執行猶予の促進、
刑の一部執行猶予制度の導入を行なうことで、
刑務所の人員増加と過剰収容状態の解消を目的としているのではないでしょうか。
交通事犯の大多数は不起訴や執行猶予判決、
または実刑判決であっても刑期が短いことはすでに承知されている事です。
交通犯罪被害者の人命軽視という大きな問題の解決が図られない状況のまま、
実刑と執行猶予判決との中間的な刑事責任に応じた刑罰を実現することとなれば、そ
の対象者のほとんどが交通犯罪の加害者(被告)に当たるのではないでしょうか。
刑の一部執行猶予制度の趣旨としては、「一部執行猶予」の要件は、
「3年以下の懲役または禁錮の言渡しを受けた場合」とされています。
つまり、3年以下の懲役・禁錮の言い渡しをする際に、
その一部の期間(刑期の1/3を経過するまで)は刑務所施設に収容し、
その後残りの期間の執行を1年以上5年以下の期間猶予するということは、
「懲役3年、うち1年の執行を5年間猶予する」となれば
2年間は刑務所で服役、その後5年間はこの間に執行猶予が取り消されない限り、
残りの1年は服役せず普通に社会生活が送れる制度となります。
そこでの大きな懸念が、仮に交通犯罪のような過失犯で、仮に1年~2年の判決で初犯であれば、
『社会貢献活動』をすることが刑の施行が行われた事と
同様に扱われる可能性が非常に高くなるのではないでしょうか。そのようなシステムは反対です。
尊い人間の命を奪う事は、決して事故ではなく殺人と考える被害者遺族にとって、
自動車事故の刑罰の軽さにくわえ、更なる二次被害を与えかねません
。
交通犯罪のように刑期が短く十分に刑務所施設で更生が見られる事は
難しい状況に追い打ちをかける結果は目に見えます
そんな被害者を苦しめる「刑の一部執行猶予や社会貢献活動」を認める事は、
加害者が自分の犯した罪の重大さを受け止める機会を奪い、逆に再犯率を高め、
犯罪被害者や遺族を苦しめるだけの法律になると言えるのではないでしょうか。
命の尊さや犯した罪との向き合い方を間違うと、再犯増加となりかねません
くわえて、刑務所内教育や処遇が十分といえない上、
社会的に犯罪者を受け入れるための処遇も全くもって不十分である事の改善もみられません。
刑務所や施設内において十分に罪と向き合う時間と社会で生活するための教育期間を十分に確保し、
社会においての処遇の連携をはかる制度を求めたと考えても、
刑の一部執行猶予制度や社会貢献活動の導入が「再犯防止目的」となるとは思えません。
「再犯防止に向けた総合対策」(案)、「刑の一部執行猶予制度と社会貢献活動の導入」の2つには、
重複する内容と感じられ単に刑務所の過剰収容状態を緩和したいとの思惑が見えます。
また一部意見として、完全な執行猶予判決を受けた人が一部実刑になるという意味で、
重罰化されるのではないかという懸念や、中間的な刑のこの制度の趣旨を踏まえて、
重罰化されることがないような運用がなされることを期待している意見を耳にします。
そうした意見の前提から犯罪被害者は排除されていると言え、
何より犯罪被害者の心情に触れていない事に社会の犯罪被害者への関心の薄さを感じます。
「犯罪の重軽と犯人の境遇やその他の情状を考慮して、再び犯罪をすることを防ぐために必要であり、
かつ、相当であると認められるとき」という要件についても、交通犯罪に関して言うならば、
この車優先社会の中で「再び犯罪をする事を防ぐ」ことを予測できるはずもなく、
まさしく不確定な未来の予測ではないでしょうか。
「刑の一部執行猶予」の場合、執行猶予中に保護観察に付される場合とも共通すると思われますが、
「刑の一部執行猶予制度」中に保護観察がずっと続くのかどうかという点、
また遵守事項を遵守しなかったときに、
「刑の一部の執行猶予」の言渡しを取り消すことができるとされていますが、
その件においても、
禁錮刑を言い渡されたが執行を猶予された加害者の執行猶予期間中の情報管理の不備、
さらには被害者への情報すらが皆無な現実で、
どのように遵守事項が順守されている事を把握し、刑の一部執行猶予を取り消す事が出来るのでしょうか。
「社会貢献活動の導入」は、犯罪の抑止にもならず逆に犯罪を助長するのではないのでしょうか。
犯罪者を野放しにしていいのですか。
「罪を犯しても刑務所に入らなくてもいい」と安易な考えを持つ人間を増やすのではないでしょうか。
まとめ
仮釈放者の割合が減少し、満期釈放により出所した者の再入所率が高いという理由をあげ、
再犯防止に向けた対策を講じるという事は、逆を言えば仮釈放者を増やす事で再入所者を減少させ、
刑務所の過剰収容の深刻な状況の解決を目指しているのが最大の目的との印象を受けます。
本来は下った刑事罰の満期収容が当然のことであり、
仮釈放制度の必要性が納得できない犯罪被害者にとって仮釈放制度自体許しがたいものなのです。
再犯防止のためには刑務所(施設)内での教育を改め、
満期収容し再犯防止にもっと尽力すべきなのだと思います。
私は、仮釈放制度も、一部の執行猶予制度や社会貢献活動の導入で
犯罪者刑務所での刑期短縮にも反対です。
以上