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検証】飲酒の量は運転にどう影響?記者がシミュレーターで実験
きょう施行の「危険運転」の“数値基準”に遺族の思いは―
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2026/7/21
不注意”の「過失運転致死傷罪」は最大7年の拘禁刑、一方、“故意”がある「危険運転致死傷罪」は
最大20年の拘禁刑と大きな差があり、これまでどちらが適用されるかで多くの被害者が苦しんできました。
しかし、7月21日から初めて飲酒運転や速度に関する危険運転の数値基準が設けられます。果たしてこれで事故の防止につながるのか…。
その是非を独自に検証しました。(読売テレビ 報道局:大阪府警担当)※年齢や内容は取材当時のものです。
過失運転か危険運転か…初の“数値基準”に遺族は「高すぎる」
大阪府内に住む河本友紀さん(54)は11年前、飲酒運転の車に娘・恵果さん(当時24)の命を奪われました。
2015年5月、恵果さんは大阪・ミナミで、駐車場から出る際に暴走した車にひかれ即死しました。
車を運転していた女(当時25)は事件直前までビールなど約2Lの酒を飲み、アルコール濃度は呼気1Lにつき、0.25mgほどだったといいます。
恵果さんは母親と同じ看護師となり、交際相手と婚約するなど夢や希望に満ちあふれていた最中の出来事でした。
母親らは「アルコールの影響で正常な運転が困難な状態」だったとして危険運転致死傷罪の適用を求め、集めた約17万人の署名を検察庁へ提出しました。
判決などによると、運転手の女は駐車場から急発進して、車止めに乗り上げたあと
、そのまま止まることなく一方通行の道を逆走し、恵果さんをはねて店に突っ込みました。
しかし、大阪地裁はあくまで「想定外が重なってブレーキとアクセルを踏み間違えた『過失』」が原因だと判断し、
「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態に陥っていたとは認められない」として、女は過失運転致死傷の罪で懲役3年6か月の実刑が確定しました。
(河本さん) 「これが危険運転でなければなんなのか、全然報われていませんし、この子の命をバカにしていると思います」
その後も全国各地で飲酒や猛スピードの車による悲惨な事故が相次ぐ中
2026年6月25日に「危険運転致死傷罪」の成立要件に、初めてアルコール濃度の数値基準を定める法改正が決まりました。
改正法では呼気1Lにつき『0.5mg以上』が、危険運転が適用される基準となり、
基準以下でもこれまで通り『アルコールの影響で正常な運転が困難な状態』と判断されれば、危険運転の対象となります。
しかし、河本さんら多くの遺族は『0.5』という数値基準が高すぎると訴えます。
(河本さん) 「娘の事件に関しては呼気アルコール濃度が0.25mgくらいだった。0.5というのは本当に異常な数値だと思っています」
アルコール濃度で運転に違いは?記者がシミュレーターで検証
そもそも、『0.5』という数字はどこから出てきたのでしょうか。
アルコールの影響に詳しく、国の有識者会議にも関わった専門家を取材すると…。 (大阪大学医学部・松本 博志教授)
「誰であってもアルコールの影響が出ているんじゃないか、そういう状態で運転をすると事故が起こると想定される濃度はないのかと委員からご意見頂いた」
有識者会議で提示された世界保健機関(WHO)のデータによると、人種や性別、酒の強さにかかわらず、
呼気アルコール濃度が『0.05から0.25』で、『判断力や自己抑制の低下』が生じ、『0.3から0.5』で『注意力や警戒心の低下』のほか、『反応の遅延』などが起きるといいます。
では、アルコール濃度の違いで実際に運転にはどのような影響が出るのでしょうか。
大阪都島自動車学校と日本自動車連盟(JAF)からシミュレーターなどの機材協力を受けて、実際に飲酒した状態での運転などを検証してみました。
検証したのは酒に強い36歳の男性記者とそれほど強くない24歳の女性記者の2人。
飲酒をしていない状態では、普段から運転する男性記者は、前の車との車間距離もしっかり取って、
死角から道路に出てくる子どもなどにも適切に対応するなど、まわりの状況をよく確認して運転ができました。
そして女性記者は男性記者ほど運転機会が多くないことから、速度もゆっくりと、より慎重に運転し、2人とも事故はありませんでした。
その後、男性記者は500mlの缶ビール3本、女性記者はビール250mlと350mlの缶チューハイ1本を飲酒します。
呼気アルコール濃度を検査すると男性記者は0.25mg/L、女性記者は0.21mg/Lと数値基準0.5mg/Lの半分ほどの状態でした。
この状態で再度シミュレーターを運転してみると…。
男性記者は開始早々、ブレーキが間に合わず前の車と衝突してしまいます。事故を回避できた場合もブレーキはギリギリでした。
(男性記者) 「正直、運転がすごくいい加減になっている、このくらいいいかと気が大きくなっている感じがします。
明らかに飲んでいない時に比べるとサイドミラーを見る数が確実に減ったなという感覚がありました」
次に女性記者が運転してみると、先ほどと違い、車はどんどん加速し、上限の時速50kmを大きくオーバーしてしまいます。
何度も車をぶつけ、信号無視をしてしまい…。さらには飛び出してきた子どもや女性をはねてしまうなど、危険回避はほとんどできませんでした。
(女性記者) 「自分では最大限気を付けているつもりなんですけど、反応ができていなくて、急ブレーキを踏んでも間に合いませんでした」
男性記者はその後も飲酒を続け、あわせて500mlの缶ビール4本とボトルワイン1本を飲酒。数値は基準の0.5を超えて、0.75まで上がりました。
この状態でシミュレーターに乗り込みますが…アルコールの影響か、発進しようとしているのになぜかパーキングブレーキをかけていました。
その後も交差点で急カーブで曲がってしまったり、センターラインをはみ出して蛇行運転をしてしまったりするなど、
明らかに異変が起きていて、真っすぐ走るのもままならない状態でした。
(大阪大学医学部・松本 博志教授)
「飲んで運転すること自体が危険です。今回、この法律に新たに数値基準が設定されて、
刑罰が決まる。法律を施行して、実際にどういうふうになるのかを見たのち、数値を下げていく」
■「数値基準の“独り歩き”は危険」大切な一人ひとりの自覚
危険運転罪の『速度基準』 今回の法改正では、速度についても初めて危険運転の基準が定められました。
一般道など最高速度が時速60km以下の道路では50km超過で、最高速度が時速60kmを超える高速道路などでは60km超過が基準となりました。
一方、基準の速度を下回っていたとしても、児童が登下校中など状況によっては、危険運転が適用される場合もあるとしています。
(弟を事故で亡くした長 文恵さん) 「私としては本日この日を迎えて法改正したことをありがたく思う」
法改正をこう評価したのは、大分県で起きた事故の遺族です。
小柳憲さん(当時50)は5年前、車を運転中に大分市の交差点で時速194kmで走行してきた車と衝突し死亡しました。
当時19歳の男が、危険運転致死の罪に問われ、一審の大分地裁は『危険運転』を認めた一方、
2026年1月の控訴審判決で、福岡高裁は「進行制御が困難な高速度だとは認められない」として『過失運転』と判断しました。
検察は最高裁に上告し、現在も裁判が続く中での今回の法改正でした。
(長さん) 「被害者が増えていかないと国は動いてくれないのか、という気持ちが、正直私の中であった。
ようやくこの時が来て、非常に大きな前進。悪質な事故が発生した時には、速やかに改善できるよう、今後につながっていってほしい」
国の有識者会議の委員は今回初めて設けられた数値基準で、司法の判断にバラつきがなくなると評価した上で…。
(京都大学大学院法学研究科・安田 拓人教授) 「
数値基準が“独り歩き”するのが危険。『それ以下だとセーフ』という“誤ったメッセージ”が国民に伝わると、『じゃあいいんだ』ということになりかねない。そこは絶対違う。
数値を下回っても処罰される」
河本さんが取材後に寄せたメッセージ
飲酒運転の車にひかれ娘を亡くした河本友紀さんは取材後、記者にこうメッセージを寄せました。
<河本さんからのメッセージ>
取材の時に『どんな姿を思い出すか』という質問があったと思うのですが、平常心が保てなくなりそうで言えなかったことがあります。
笑っている顔を思い出すこともありますが、病院で傷つきボロボロになり息絶えた姿を見ているので、夢で出てくる恵果の顔は傷だらけのことが多いです。
数値の妥当性の検証は今後も欠かせません。そして何よりも大切なのは、こうした被害者を出さないというドライバー、一人ひとりの自覚なのではないでしょうか。
(読売テレビ「かんさい情報ネットten.」2026年7月7日放送)
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